日本の森林について
身近な環境である「日本の森林」の荒廃が進んでいるという現実を、皆さんはご存知でしょうか。そして、日本の森林の多くは、適切な手入れをしなければ環境維持できないことをご存じでしょうか。 森林を守るためには数多くの作業が必要です。それが継続できない様々な理由から、日本の森林は荒廃する傾向にあるのです。
日本は、国土の67%が森林である森林大国です。(ドイツ40%、フランス23%、中国13%、イギリス12%など) 日本の森林約2,500万ヘクタールのうち、約4割に当たる約1,000万ヘクタールは人が手を入れて作り上げた人工林です。

日本の人工林のほとんどはスギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツ、クロマツ、エゾマツ、トドマツなど、比較的生長が早く、建築資材等に利用できる針葉樹林です。これらの森林の多くは、戦後の復興のために、第二次大戦以降に植えられました。
人工林は、良質な木材供給を行うために、適切な手入れを行うことで、樹木が健全に育ちます。 植栽された樹木は、下刈り、枝打ち、除伐と保育作業を行うことで、競争しながら、まっすぐに育っていきます。順調に生長し、20~30年くらいたつと、林の中は混み合ってきます。 混み合ったまま放置しておくと樹木はひょろひょろともやし状となり、病害虫にも弱い木となってしまいます。
そこで、「間伐」と呼ばれる間引き作業を行い、林内環境を良くして、樹木が健康に育つようにします。植えた木の本数を減らす代わりに、残された木が健全に育つように手を入れるわけです。 間伐をすることにより、地面に日光が差し込み、さまざまな草や木が新たに生え、それを食料とする昆虫や鳥が生息するようになるなど、生物の多様性が向上します。また、地中の根もしっかりと張り巡らされ、台風や大雪、土砂災害などに強い森林となります。
しかし、森林の適切な管理は進まず、日本の森林は老朽化、荒廃が進んでいます。
昭和30年代90%を超える割合で利用されていた国産材は、木材輸入の自由化、変動相場制や燃料により、外国からの輸入木材が増え続け、今では国産材の利用は20%程度まで落ち込みました。その後、自給率UPのための政策や、木質バイオマスエネルギー利用増加などから、40%程度へと回復してきています。
日本は国土面積の67%を森林が占める世界有数の森林大国です。
森林の適切な管理を担う林業は、間伐を中心とした保育作業や伐採・搬出等に掛かる費用も回収できない森林は保全ができない経営状況になっています。
山林所有者や林業経営者の意欲は低下しており、若者は都市部へ雇用を求め、林業の衰退とともに、林業離れによる後継者不足、林業就業者の高齢化、山村問題、限界集落と呼ばれる問題まで起こっています。
今、私たちが直面している最大のリスクは、地球温暖化です。 地球温暖化は、人間の活動の拡大によって排出される二酸化炭素、これを多く含んだ温室効果ガスにより、地球の表面温度が上昇することです。表面温度の上昇によってもたらされる気候変動は、様々な自然災害や異常気象を引き起こします。
地球温暖化を防ぐためには人間の諸活動による排出される二酸化炭素を大気中に放出しないように努力し、次に、大気中から二酸化炭素を取り除くことに取り組む必要があります。
大気中から二酸化炭素を取り除くには、森林資源による二酸化炭素の吸収を見込むことができます。 森林の樹木は、半永久的に利用可能な太陽からの光エネルギーを利用して、大気中の二酸化炭素を有機物として固定することで大量の炭素を蓄えています。
森林は、その森林面積を維持し、植栽、保育、間伐、伐採、そして再植林という適切な森林管理を継続することで、単年度ごとのCO2排出抑制対策に比べて、永続性があり、循環型社会の構築に寄与することができます。
スギ人工林は1ha当たり約170t(1年間当たり平均で約2.1t)、同じく80年生のブナを主体とする天然林は1ha当たり約100t(1年間当たり平均で約1.3t)程度の炭素を蓄えていると推定されます。
(二酸化炭素に換算すると、それぞれ約620t、約370t、1年間当たりそれぞれ約7.8t、約4.6t)スギの吸収量と身近な二酸化炭素排出量とを比較してみましょう。
例えば、自家用乗用車1台から1年間に排出される二酸化炭素の量は、80年生のスギ人工林約0.3ha(スギ約160本)の年間吸収量と同じくらいです。 また、1世帯から1年間に排出される二酸化炭素の量は、80年生のスギ人工林約0.8ha(スギ約460本)の年間吸収量と同じくらいです。 我が国の森林が1年間に蓄える二酸化炭素の量は約8,300万トン(平成18年度)程度と考えられます。

現在の日本の森林は、外国産木材やプラスチック等の木材に代わる資材が増加したため、国産の木材の需要が減少し、健全な森林整備が行いにくくなり、木々の育成に必要な間伐等が十分に行われていない状態です。 このような森林に間伐等を実施し「適正な森林経営が行われている森林」を運営していく必要があります。
地球温暖化防止の一助として、二酸化炭素の吸収量を高め継続して吸収する状態、つまり、適正な森林経営が行われている森林づくりを進めることが必要です。 森林は水源涵養機能や土砂流出防備機能、生物多様性の維持・向上等も考慮した整備を進める必要があります。

森林は様々な機能を持ち、地球環境保全に大切な役割をもっています。
植栽、保育し、間伐し、伐採し、また再植栽をする。つまり、日本の森林を活性化させることが、私たちの暮らしを守り、生活の質を高める”という事実を、多くの人に知ってもらう必要があります。そして、林業の需要を高め、林業へ資金を集める必要があります。
伐採された国産材を積極的に使ったり、森林をCO2の吸収源としたカーボンオフセットを活用
伐採された国産材を積極的に使ったり、森林をCO2の吸収源とした、カーボンオフセットで森林へ資金を還流させるなど、間伐やその後の手入れなどが定期的に行われるように日本の森林に対する需要を高めることで、日本の森林はさらに活性化していくのではないでしょうか。